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「今日、俺んとこ泊まる?その買い物しようか…あ、そうだ…ここS町だよな…」
と、突然スマホを操作する藤司の唇がツヤツヤ過ぎるので、手のひらでゴシゴシしながら“うん”と返事をする。
彼の、ゴシゴシされたままスマホを操作し
「事務所が…」
と唇を動かす感覚は私のズボラさと若干似ていて落ち着く。
「何の話?」
「うちのマンションが事務所より遠いだろ?」
「ここからだと事務所の方が近いんだよね」
「事務所が真ん中くらい。ここはすずめ屋が近いし、俺が引っ越そうと思って」
「えっ?大掛かりな……感じでビックリ…」
「そうか?今、不動産やってる知り合いとお客さんのどちらにも“うちの事務所からS町の間のマンション紹介して”って送ったから、近々返事があると思う」
相変わらず仕事が早いな、と思っていると
「一緒に住もうか?二人一緒に…どう?無理にとは言わない。俺は一緒がいいけど、和花のいいタイミングもあると思うからな」
彼が私を見つめた。
「うん?何か可笑しい?可愛く笑ってるけど?」
「フフフフッ…可笑しい…」
「何が…そんなに楽しそうなんだ…」
彼にも笑いが伝染したのか笑っている。
「不動産の連絡で“仕事が早いな”って思ってたら、藤司がもうひとつ先にいたから」
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