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ありがとうって言ってくれるんだ…こっちがありがとうだよ…でも…息苦しい…
「…シヌ…」
「ごめん、ごめん」
そう言って藤司は私の顎に指先をかけるとキスをする。
「人工呼吸にする?」
「あははっ…しない。ご飯にする…ありがとね」
それからキッチンへと移り、安心出来る彼の隣で
「私、道具いらない」
とはんぺんの袋を開ける。
「え、どういうこと?スゴ技?神の手か?」
野菜炒めの準備をする藤司の反応が可笑しい。
「はんぺんに薄くマヨネーズを塗って、かつおぶしとチーズをかけてトースターで焼くだけだよ」
「感動的なつまみだな」
「焼くのはもう少しあとでいいね。野菜を洗うくらいは手伝える」
「頼んだ」
「頼まれた。野菜の種類が多いからこれだけで栄養満点…キャベツは千切っていい?」
「いい」
私は豚こまと千切ったキャベツだけを炒めることもある…道具を使わないズボラさだけど、藤司は豚肉を炒めながら野菜を切る…道具をせわしなく持ち替えるという方式らしい。なかなかの手際のよさだ。
この2品と、買ってきた春雨の酢の物を並べ、ビールで乾杯して食事開始。
「一人じゃ、こんな種類の野菜を入れられないよな」
「使い切れないもんね…うん、美味しい。ピーマンがシャキっとキレイって上手ってことだね」
「そうなのか?」
「さあ…たぶん?私は好み」
「和花好み、いただきましたぁ。と……かつおがいい仕事してるな…うま…」
うん、美味しい…そしてこの雰囲気…何となく、一緒に生活出来そうな気がするよ。
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