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転職、転居…順調?
会社を正式に辞めてから、藤司の事務所で働き始めた。
「なんで…税理士と司法書士が一緒にやってるんですか…」
と初日に言ってしまったのは、覚える事務作業が2倍だと気づいたから。だって…たとえば、請求書のテンプレートが三原先生のと武本先生のでは全く異なるのだ。
「弁護士とかも一緒にやってる事務所もあるよ。個人事業主とか問題を誰に相談、依頼すればいいか分からない人も多い」
「だから横の繋がりはあるんだけど、事務所に複数の専門家がいると、まず“ここに言えば何とかしてくれる”と思ってもらえる」
「そして何より、開業にかかる費用を抑えられた」
二人の話を聞くと…なるほど…覚えます…と、二人の先生が手放したいと思う順、つまり専門性のない事務作業を次々とこなす。
数日でわかったこともある。
「司法書士の方が儲かってる感じですか?」
「はははっ…アリちゃん、なんでそう思った?」
フルネームをやめて“アリちゃん”と未知だった呼び方をする武本先生が牛乳パックにストローをさしながら聞き返す。
「ひとつの案件が短期間で終わってどんどん請求書を出してるから」
「それはそうだね。でも、毎日登記申請があるわけでもなく、個人事業から法人にしますっていう会社設立があるわけでもない。それにそういう案件は一回限りで終了。だから顧客と言ってるのは三原くんの客で、僕もここで雑務は手伝ってるよ。年間の売上はほとんど変わらない」
「武本先生が個人でやれば、三原先生を手伝わなくても十分収入はあるってこと?」
「ある程度はね。でも三原くんが、客の家の名義変更だの、僕にいろいろと仕事を持ち帰ってくれるから、お互いにこれでいいんだ」
なるほど...
「武本先生、三原先生…士業で簡単なものってないと思うけど、比較的取りやすい資格って、あります?」
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