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藤司が言った
“税理士は行政書士業務をカバーできる資格だけど、試験科目が…”
のあたりを全く知らないまま決めた私は、我ながら…良く言えば大胆な決断力、ホントのところは“なんとかなる思考”の緩さだ。
独立するつもりは微塵も無いけれど、新しい職場でステップアップ出来るなら…役立てるなら…嬉しい。一度はコールセンターでステップアップと無縁の未来を突き付けられたんだもの。
今日はすずめ屋に行って、明日は実家に帰る日で…
藤司も顧客訪問へ出て行ったあと、1時間後に私が閉めて出なきゃいけないかな…武本先生がギリギリ戻って来るかな…と時計を見てから、大きく伸びをしてパソコンに向かう。よし…印刷…オッケー…
コンコン…カチャ…
「こんにちは〜あれ?」
あれ?はこっちですね…どなたの訪問予定もなかったので…
「こんにちは。新規のご相談でしょうか?」
「わぁ、失礼な…新規の相談ですって?他の人はいない?」
「……失礼しました。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
しまった…すでにうちのお客様のようだ。名前を聞けば分かることを願う…でもまだ全ての顧客を覚えていない。
「きおか商店の、アカネです」
うん?どうして“アカネ”?でも…
「きおか商店様…三原ですね?本日のお約束はなかったと思いますが…先ほど外出しました」
きおか商店さんは、この前手書きのFAXが来て覚えているよ。珍しいからね。今の店主の祖父が始めた酒屋さんが、3代目の今は、酒屋だけではやっていけないから地産地消を謳って、野菜果物からお漬物などの食品を販売してうまく商売されていると聞いた。
「そう…じゃあ、ここで待たせてもらうわ」
はい?どーいうことかな?さっき出たばっかですけど?って…勝手に座ってるよ…
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