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「チッ…」
ちょっと…武本先生…この人、顧客さんの娘じゃないの?なのに、舌打ちって…
「アリちゃん、きおか商店に電話。僕が話す」
「はい」
「なんで?ちゃんと答えてくださいよぉ。この人だけでは役立たないでしょ?」
私は子機できおか商店さんの番号を押しながら、また指をさされた気配を感じた。
「黙れ。もうキミに話をしてもムダだと分かったから、木岡さんと話す」
そう言う先生に子機を差し出すと、彼はすぐ横の椅子にドカッと座った。あ…法務局とか行って来た先生のバッグが床に置いてあるよ…
私が床に置いてあったバッグを、武本先生のデスクに運ぶと
「三原総合事務所の武本です。お世話になっております」
と言いながら先生が手を振る。はい…どういたしまして。
「いや、何もないんですけど、娘さんが突然うちの事務所に来てですね、うちの可愛い、優秀な事務員を指さしながら“こんな素人では役立たずでしょ?”と失礼極まりない事を叫んで、自分が働くというような妄想を口にされて困ってるんですよ。仕事はないから帰ってくれと僕が誠心誠意頭を下げても通じなかったもので、こうしてお電話を差し上げた次第です」
絶妙に話が盛られている…
「叫んでないよっ」
あぁ…それが叫んでるって。誘い出されたら負けだよ…
「あんな凶器のような爪で働ける場所なんてあります?お父さん、しっかりしてくださいよ?」
「やっぱり、藤司先生じゃないと話にならないわっ」
「何言ってんの?アリちゃんが無能だと言われたのを聞いたら、三原くんはありとあらゆる言葉でキミを罵るよ?アリちゃんラブなわけ。分かる?キミ、職務経験ないんだろ?アリちゃんは経理一筋の経験者。キミが指差す相手じゃない」
あぁ…これって…お父さんが娘ラブだったら、顧客ひとつ無くならない?
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