転職、転居…順調?

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ポン…と私の頭に手を置いた藤司は 「こんなので残業ってしょーもないな。もう心はすずめ屋だっただろ?」 と笑う。 「……そんなことも…あるけど…早かったですね」 「向こうで見る予定の書類を受け取って戻って来た。武本が手こずる予測も出来たから」 「「なんで?」」 「ぅおっ、気が合うね、アリちゃん!」 「合わない、合ってない」 声が揃ったんだけど……藤司が武本先生をビシッと否定して私の隣に並んだ。 「なんでかっていうと、このきおか商店の娘…」 「あー、待った、待った。一応言うと、三原くん。この電話きおか商店のご主人に繋いだままだ」 「俺はいい。木岡さんが聞くか聞かないか判断されたらいいこと」 「だよな。僕たちはいつも真っすぐ進むのみ」 「そういうこと」 藤司は私を“真っすぐ”と言う事があるけど、彼が真っすぐなんだ。 「この人、何度もきおか商店で会ったことがあるんだよ。就職してないから家にいるんだな」 「就職してる爪ではないわな。パソコンは叩けない、商品には引っかかる…人の肌も傷つける凶器だろ…」 武本先生はアカネさんのネイルがトコトン嫌いなようだ。まあ、重そうな装飾だね。 「で、俺と武本が結婚しているのか、彼女がいるのか…何回か聞かれたワケ。武本の結婚以前から何回も。だから、ここまで来たってことは、しつこい予想で俺が帰って来たってこと。仕事とか言って、男狙いだろ?ここホストじゃないんで、帰ってくれ」 「コイツ、南田さんと絡んでるみたいだよ?」 「痛くも痒くもないだろ、武本?負け犬の遠吠えは無視。負け惜しみ以上にはならないんだから」 「…気が合うね、先生お二人…負け惜しみって同じこと言ってます」 「言っただろ?俺たちは真っすぐブレない。和花もここのやり方を覚えて」 「はい…」 別々に、ここまで同じことを言える二人はすごいと思う。尊敬するよ。
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