4179人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
ガチャ…
「茜っ…」
ガラケーを手に、ちょっぴりレトロな酒屋の前掛けをしたオジサンが飛び込んで来たので、きっときおか商店のご主人だろう。
ベシッ…
「っ…たぁ、い…」
「バカモンがっ、痛くしてんだから痛くて当然」
娘の頭をパンッと叩いた木岡さんは
「先生、迷惑かけて申し訳ない。事務員さんも、本当にすまないことで…」
と私たちに頭を下げると
「今すぐ3人に謝れ、茜。わざわざここまで来ての暴言と悪態は常識はずれが酷すぎるってもんだ。先生たちに悪いところがひとつもない…もう謝っても遅いくらいだが、謝りなさい。娘が人として当然のことが出来ないなら、うちも商売なんてやってる暇はない。娘育て、娘の教育をやり直しだ」
言いながら額の汗を手の甲で拭った。急いで来たのだろう…
「だって…南田先生が…」
「人のせいにするな。南田先生が何を言おうが、茜がここで暴言を吐く理由にならない。お前は金を盗んで来いとか、あの家にゴミを置いて来い、と人に言われてやるのか?やらないだろ?そんなことは、自分で判断するんだ」
「でも…先生たちも暴言吐いた…」
「電話で聞いていたが、あんなのは暴言でなく正論。家族や仲間を悪く言われて言い返すのは当然のこと。だっても、でもも、ない」
そう言った木岡さんはパッと…ぇ…土下座するつもり?こちらへ膝を向けて座ると
「茜」
と隣を指さした。すぐには動かないのを察して
「先生たち、忙しいところ悪いが…ここまで時間がかかったついでにもう少し待ってください……謝って、許してもらえるとも、訴えられないとも思わない。でもここで謝れないと、娘が一生おかしな方へ行っちまう」
木岡さんがそう言い、誰もが動かない静寂が広がる。
最初のコメントを投稿しよう!