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ずっ……茜さんがヒールの底が音を立て、座ろうとしたけど…ヒールが邪魔して正座にならず膝だけをつく。隣の木岡さんが黙って自分のスリッポンを脱いで座り直すと、彼女もヒールを脱いで座った。
「茜」
全てワンテンポ遅れる反応だが、三原先生と武本先生は木岡さんを受け入れているからじっと待っている。
「……ごめんなさい」
「茜は何に謝ってる?」
「…会ったことない人のことを知らないまま…無能だと言ったこと…」
「だったら、それをちゃんと相手に謝れ」
「…うん……あの…アリちゃんさん…失礼なことを言ってすみません…でした」
「あ、はい。大丈夫です…」
って…応えて良かった?と、三原先生を見るとそっと背中を…うーん、お尻を撫でられた。
「腸煮えくり返ってても、大丈夫ですってな。こうしてみんな働いてんだ…本当に娘が申し訳なかったです」
木岡さんは私に頭を下げたあと
「それから?」
茜さんに視線を動かした。
「藤司先生、要先生…」
「それもおかしい。やり直し」
「………三原先生、武本先生……いろいろとごめんなさい」
「いろいろと…だな。たくさんあるが、言ってみろ」
「…悪い噂を流すと言ったこと……あ、乗っ取ってると、本当でないことを言ったこと…すみませんでした」
一拍置いて
「木岡さんの親心を受け止めて、一言言います。本来ならもうどうでもいい相手なんですが…木岡さんの誠意には応えて…」
と三原先生が口を開いた。
「うちの事務員を指さして、戦力にならないと言いましたよね?俺的には、うちの者にそれやられるのが一番胸糞悪いんです」
「僕もだね。三原くんが戻る前に、公私混同だってうちのことを言った。僕たちはいつだって真面目に仕事をしてきた…ちゃんと考えて新しい人材も迎えた。その全てを否定するような言葉が許せない」
二人ともカッコいい。このあとお酒、奢ります。
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