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言葉を発したのは、意外にも茜さんだった。
「お父さん…ごめん。ちゃんとするから…取り下げてもらえるようにするから、先生の言うようにお願いして」
「茜を信じる人はお父さんだけでないってことだ。武本先生、三原先生、お手数をお掛けしてすまないが、そのようにお願いします」
「承知しました。きっと大丈夫ですよ、木岡さん」
「僕もそう思う。今の“お父さん、ごめん”できっと大丈夫です。弁護士にはこのやり取りまで伝えておきますから」
「南田は、有資格者でありながらの言動なので徹底的にやりますけどね。茜さん、南田にここでのやり取りの詳細を言わないようにしてください」
ここで三原先生と茜さんの視線が合ったかな…きっと大丈夫だと私も思う。
「茜さんは、木岡さんと同じくこちら側の人間として、南田に情報を流さないと約束して欲しいとお願いしています」
「あ……こちら側の人間…はい…でも……でもはダメか…でも…南田先生から“今日どうだった?”って聞かれる…」
そういうことか……
「え…アリちゃんさん…どうしたの?」
「和花?」
茜さんが私の涙に気づき、藤司が私の肩を抱いて撫でながら表情を読み取ろうと顔を覗き込む。
「大丈夫……茜さんの不安がちょっと………客観的に見て大したことがなくても、どうしたらいいか…分からない………本当に分からない時ってあるんだよ…」
会社で“気にすることはない”と当たり前のことが出来なかった自分に、少し彼女が重なった。
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