4176人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「和花…」
ぐいっと、私が縮む勢いで頭を撫でた藤司は、手をそのままに
「和花のこの涙は南田が事実と異なるメールを彼女の会社に送りつけたことで傷ついた涙…自分でどうしようもないことでただ傷つくことしか出来ない時間を和花は知っている。だから、茜さんが自分でどうしようもないことがあるなら…と…重なったんだな…」
木岡さん親子に説明しつつ、完璧に私の気持ちを理解して見せた。はぁ…もう大丈夫…ここでは傷つかないことも、理解してもらえることも分かるから。
「いま、南田さんに電話すれば?木岡さんも僕たちもいるところで…何も隠さず言っていいから」
それはナイスアイデアだよ、武本先生。
皆が見守る中で、茜さんがスマホをタップする…さっきのゲームもだけど、そのネイルで器用だ…と思ってしまった。
「……あ……はい……事務所に来て、先生たちにも事務さんにも会ったけど…いい人ばかりで…私は事実じゃないことを人に言ったり流したりしないっ…もう連絡しないし、しないでっ」
ブチ…ぇええええぇぇ……言いっ放しのぶち切り?
「木岡さん、カッコいいですねぇ、娘さん」
武本先生に同感でコクコクと頷いてしまう。きっとこれでいいんだよ。非常識に論破してきそうな先生相手には決別だけ伝えればいい。
「なんとか…これからですがね。今日はほんと先生たちのおかげです。謝るだけでなく、礼も言わなくちゃならない…ありがとうございます」
「木岡さん、アリちゃんは日本酒ラバーですよ」
武本先生?
「おお、そうでしたか。じゃあレア物が入ったら、ぜひプレゼントで届けます」
ほぉ…嬉しい棚ぼただ。
最初のコメントを投稿しよう!