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「頑張ったらいい事あるね」
藤司とすずめ屋へ向かいながら呟くと
「誰もが毎回そうであって欲しいな」
と返ってきた。
「そーゆー藤司が好きだよ…毎回そうでなくても、理解してくれる人がいるとまた頑張れるとも感じたし……今日は最初ビックリしたけど、無駄な時間じゃなかったかな…って…」
「大人だな」
彼は繋いでいた手にキスをすると
「大人の世界…きれいごとだけで生きていけないけど、和花と一緒なら真っすぐ進める」
と言う。
「嬉しいけど、武本先生と一緒じゃない?武本先生、これまでの歩みもこれからも、すっごく真っすぐ…藤司と事務所立ち上げた時の信念のままって感じで、熱弁してた」
「普段は熱いところを見せてない男だよな」
「僕って言っちゃってるし」
「あれな…言っていいのか…いいな…あれな、中学で武本がちょっと有名だったんだよ。高校から俺は一緒になったんだけど、入学当初からヤンチャな先輩に目をつけられてるわけ」
「武本先生が?」
「そう。で、いきなりトラブルは避けたいから、武本さ、先輩とか先生相手に“僕”って使い始めたんだ」
「あー、なんとかソフトに見せる…みたいな?」
「それそれ。で、定着した」
「そっか。南田さんは…どうしてここまで攻撃すると思う?」
もうすずめ屋が見えたところで私たちは足を止めた。
「おそらく…予測でしかないけど」
「うん」
「ずっと3人の中で自分の売り上げ金額が少なかったことにコンプレックスを感じていたと思う。俺たちの業務の事務作業をしてもらっていたから、俺たちは気になっていなかったけど、自分の専門で稼げていないのは気分良くないと漏らしたことがあったな」
何が悪意のきっかけになるかは本当に分からないんだな。
「明日、和花の実家に行くの、何時までに出たらよかった?それによって今日の引き上げる時間が変わる」
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