4180人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「特に決めてなかった」
藤司に、正直に緩さをさらけ出すことはすでに普通のことだ。
「じゃあ、11時頃から車を走らせて、昼飯どっかで食べて、到着くらいでいいか?」
「うん、いい」
「それ電話しておいてくれる?」
そう言われると、あとでは遅いから今になるよね。
「もしもーし、お母さん。明日藤司と行くって言ってたの、1時前後に着く予定。予定ね」
“はーい。ご飯は?”
「食べてく」
“分かった。気をつけてね”
「はーい」
ピッ…
「大丈夫、伝えた」
「よし、腹へったな」
私がスマホを持っているから手を繋げないせいで、お尻に彼の腕が…手が…?手を繋げないせいか?
藤司と付き合っていることは、会社を辞めると決めた時点で親に話をしてある。いま、私が藤司の事務所にいることも言ってある。
彼は引っ越しをしたけれど、私はまだハイツにいるまま…明日、両親に一緒に住むと伝えるんだ。
「のんちゃん、おかえり。先生も」
「ただいま〜」
と言う私の後ろで
「またついで…」
と藤司がボヤく。
「遅くないか?残業させられてんのか?」
「そーでもないよ、おっちゃん。ビールと、わぁ…里芋とあたりめの煮物だ。それ大盛りでお願いします」
最初のコメントを投稿しよう!