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「今日はマグロの落としの唐揚げが出来るよ?」
「にんにくとか生姜の美味しいやつ?」
「そう」
「「それで」」
私と藤司の声がぴったり揃うと、おばちゃんが
「何か野菜もつけておくわね」
と笑いながら冷蔵庫を開けた。
「しげちゃん、いないの珍しいね」
「もう上に行ってる、チョウさんと」
「おっちゃんは行かなかったんだ」
「卓からあぶれた」
「大繁盛?」
「いや、8人しかいないんだがな。こんなもんだ、なあ、先生?」
「そうですね。ずっと順調に波のない収支で最高じゃないですか?」
私はまだすずめ屋さんの書類を一切目にしていないけど、この先見ることになるのかな…と思うと、とても不思議な気がする。
「順調で安定ですから、帳簿の預かりを3ヶ月に一度にしませんか?変わったことがあれば、その都度連絡をもらうってことで問題ないと思います」
「それは、私の帳簿はハナマルもらったってこと?」
おばちゃん…胸の前で両手で作ったのは、たぶん丸?だけど…ハートになってるね。あははっ…ジワる…
「はい、そうですね。ここで経費も少し抑えていきましょう」
「先生の収入が減るじゃないか。うちからの毎月のは微々たるモンだが」
「中筋さん、それはいいんですよ。依頼者の経営をどれだけうまく回せるかっていうのも重要な仕事だと考えているので」
カッコいい…美味しそー。藤司の言葉を聞きながら、私は手を合わせてお箸を持った。
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