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暁星良。彼女とは幼稚園が同じで、小学校でも何度か一緒のクラスになったことがある。
言葉を交わしたことはない。どちらかと言えば、私の苦手なタイプだ。友達が多くて、ハキハキとなんでも積極的にやる人。中学の中でも、目立つ存在。
大人しくて波風立てずに過ごしたい私ーー宵野月架とは、正反対の人。
廊下ですれ違う瞬間、目が合った。ゆっくり流れていく視線は、お互いに同じところで消える。よくあることだ。
「さーて、今日のテーマは『世界の終わり』です。もしも、地球最後の日が訪れたとしたら、みんなは何をしたいですか? 考えてください」
学級活動の一貫で、意見交換の時間が設けられた。日頃、あまり関わり合いのないメンバーにグループ分けされ、私は暁星良のとなりに座る。
「上手いもん食いたい。めっちゃ高級なやつ」
「えー、わたし推しに会ってから死にたい」
それぞれが発する内容に、でしょうねと心でうなずく。みんな想像通りの回答だ。日頃の行動は思考を映し出している。
「なんだろなぁ。私は、特にないかなー」
コロンとシャーペンを転がして、暁さんがつぶやく。
違和感しかなかった。
てっきり、恋人に会いたいと言うものだとばかり。
「なにもないの? 星良ちゃん、彼氏とか」
「いないよ」
じゃあ、友達ーー。
「仲良い市原さんとかさ」
「いっちーかぁ。特に会いたいとか、浮かばなかったわ」
アハハと暁さんが笑うと、向こう側でくしゃみの音が聞こえた。
明るくて交友関係の広い人だけど、意外とあっさりしているんだ。
「宵野さんは?」
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