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星良が敵側にいると知ったのは、すぐあとのこと。
天界とは真逆の地底に存在する神となり、星良は生活している。地球を滅亡させる役割を担っているらしい。
信じられないけれど、それほど悲しくはなかった。
どんな形であろうと、星良が生きていてくれてよかったから。
***
「ツキカ様。そろそろ、ご準備をお願いします」
「わかってる。少ししたら行くから、一人にしてくれる?」
「……承知しました」
侍女が去ってから、私は鏡のそばに咲いている彼岸花を摘む。
地底の神が、いよいよ行動を起こす日が来た。
天界と地界は、はるか昔から対立している。すべての災いから地球を守る天と、すべての力を自分のものにしようとする地。
私たちは、それぞれの神に選ばれた。ううん、選んだのかもしれない。同時に生を受け、この世界に産まれた瞬間から、決まっていたこと。
どちらかを、選ばなければならなかった。
鏡面に星良が現れたのは、戦線布告だと侍女たちは言う。
心のどこかでは、信じていた。星良は、そんな恐ろしいことはできない。
きっと、なにか作戦があって、敵を欺こうとしているのだと。
彼岸花を胸にしまって、天界の外へ出た。ここへ連れて来られてから、初めて別の空気を吸った。
そこは、いつもと変わらない夕焼け空だった。強いて言えば、少しだけ雲の広がりが大きくて、春の空気が重い気もする。
なんの疑いもなく、日常通りに電車へ乗り、みんな学校へ通う。この光景を空の上から眺めながら、私は星良を待った。
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