ルキ ①

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「まぁ、いいわ。せっかくこうして会えたんだから、名前くらいは教えてあげる。真由美(まゆみ)よ」 「真由美(まゆみ)? 随分と日本的な名前ですね」 「当たり前でしょ! 私は日本人なんだから!」 そっか、たしかにさっきから日本語で話しているし、見た目も普通の日本人だ。 「アンタも名乗りなさいよ!」 「あ、すみません……俺はルキって言います」 「ルキ? アンタの方がなんだか悪魔みたいな名前ね」 そう言って笑い出した。 確かに俺は、変わった名前だとよく言われる。 けれど、自分の名前を笑われて、いい気分はしない。 「あの、俺の名前、笑わないでくれますか?」 「なによ! アンタは私のこと、悪魔悪魔って言っておいて! それで、自分の名前は笑うなとか、ムシがよすぎるわ」 悪魔がなぜ怒っているのか、俺にはよく分からない…… どうもこの流れから、悪魔との契約という流れにはならなそうだ。 だいたい、真由美ってなんだよ。 ただの人間じゃないか。 「真由美さん、今日はこの辺で失礼します。変な願い事とかしてすみませんでした」 「私も、てっきり白馬に乗った王子様と会えるかと期待していたんだけど、出てきたのはアンタだったからねぇ」 「じゃあ、儀式はこれで終わりにしますね」 「そうね、そうしましょ」 俺は本に書いてあった通りの手順で、召喚を終える作法を行った。 すると、悪魔を閉じ込めておいた魔法陣から、悪魔の姿は消えた。 ふぅ…… もう一度、悪魔召喚について勉強して、明日やり直してみるとするか。
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