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公園には誰もいなかった。
ゆっくり丘を登って、朔の隣に腰かける。心臓がまだ鳴っている。でも、静かにしていると、次第に動悸もおさまってくる。
「着いたね」
朔の声が耳元で聞こえて、それだけで私は泣きたくなる。一面紺青に染まった空をじっと見据えていると、それを待っていたように白い光がひらめいた。
「あっ、流れた」
朔が声をあげて、私もけんめいに目をこらす。ひとつも視界から取りこぼしたくなかった。でも、そのうち追いきれないほど、たくさんの星が流れ始めた。宇宙で燃えつきる命の群生を見ているようだった。
「すごい……」
思わずそう言っていた。
縦横に流れ落ちる星。
朔も私と同じ夜空の端に佇んでいる。
「何か願いごとする?」
朔が私にそう聞いた。
『星に願いを』なんてありふれた迷信でしかないのに、朔が言うと特別になってしまうから不思議だった。応えることができないうちに、
「結菜が元気になりますように」
そうつぶやく声がして、私は何も言えなくなった。
この病気は治らない。
もう少しで私は、流れる星と同じようにこの世界で燃えつきてしまう。脈打っている心臓も、完全に止まるときが来る。肉体は火葬場で燃やされてそのほとんどが灰になり、白い骨だけが残るだろう。そんな想像がくり返し、強烈に頭の奥に浮かんで、それはただの妄想ではなく、もう少ししたら現実になる私の確かな未来だった。
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