最後に流れ落ちる星

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 私は隣にいる朔の腕にそっと触れてみる。その温度に気づいた朔が、私の手を握りしめる。  こんなに儚い一瞬でも、ずっと覚えていたかった。肉体が消えてしまっても。いつか魂だけになって、世界を見下ろす日が来ても。 「連れだしてくれて、ありがとう」  私は吐息をはくように、朔だけに聞こえる声で言う。  この感謝の気持ちを、声にならない慟哭を、他にどんな言葉で言えばいいのか分からない。ありがとうの五文字だけじゃ、とうてい伝えることはできない。それがとてももどかしい。もどかしくて、やるせなくて、ただ朔の手を強く握ることしかできなかった。 「来年も一緒に見ようよ。流星群をこの場所で」  朔の声が私の鼓膜をわずかにふるわせて、 「うん」とうなずけない自分自身がかなしかった。  容易に何のためらいもなく、未来の約束を交わすことができる人たちがうらやましかった。それがどれだけ幸福なことか、朔に出会わなかったら永遠に分からなかっただろう。 「きれいだね」  不自然な沈黙をのりこえて、私はやっとそう言った。  一緒にやりたいことが本当はたくさんあったのに、もう全部やりきれない。星を見たいと思ったのは、燃えつきる流星の輝きを目に焼きつけてみたかったから。そうすれば、本当は何も怖がらなくていい気がして。少しでも安心したかったのだ。その思い出があれば――最期の瞬間まで、私はひとりじゃないって思えるような気がしたから。
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