僕だけではなかった

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僕だけではなかった

 気だるいような蒸し暑さが身体の芯まで溶かしにくる。垂れる汗をYシャツの袖で拭っても、吸い込む空気までもが暑くて止まる気配がない。  爆音があちこちで鳴り響いていて、どこもかしこもお祭り騒ぎだ。当然だ、お祭り騒ぎをするための今日、この時間、この場所なのだから。ドンドンという壁を叩くような音さえ聞こえてきて、盛り上がりが手に取るようにわかる。  Mrs. GREEN APPLEの『青と夏』をBGMに学校祭の映像が流れている。誰かが学校の階段を駆け上がっていき、校舎からの青空をバックに題名が浮かび上がる。歌詞が書かれた紙を持つ生徒が次々と写されては流れていき、ストーリー仕立てに進んでいく。  肩を組んで、ピースをして、手をつないで、ジャージを上に着て、クラスTシャツを着て、寝っ転がっていて、変なポーズを決めて、色々な様子が映し出されていた。  みんな笑顔で歌詞を体現しているかのように楽しさがにじみあふれている。僕は携帯を取り出してロックを解除し、画面をタップした。横向き三角の停止表示とともに音と映像が止まる。  さっきからひっきりなしに画面上部に落ちてくるクラスのグループLINEがうざったい。 『あれどこだっけ?』 『次2年生のステージ始まるよ!』 『今日夜に花火上がるんだって(^o^)/ 楽しみ!!』  画面をスライドさせてホーム画面に戻る。テレビに映し出されたYouTubeの映像は一瞬暗くなって接続が切れた後、本来の広告である某アイドルが映し出されて自己紹介が始まった。  グループLINEには302件の未読メッセージがたまっていて、開くと7時32分に『学校祭初日、みんな頑張ろう(^^)/』と委員長が発信しているのが目につく。 『藤悟、学校来てる??』 「てかまじ暑いなここ」
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