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「キュアヒルドレミッ。キュアヒルリペアッ」
キュアヒルは、以前と変わらぬ笑顔で飛んで来た。
キュアヒル様!と崇める祖父。
なにこれ……と戸惑う母。
そして航は、また泣いた。
「あらあなた!久しぶりね!まあ、わたしに会わないっていうのは、痛みのない幸せな人生ってことだから、寂しかったよなんて言えないけど!」
航と会えて、ほんのりと赤らむキュアヒルの頬。しかし涙目の彼と、彼の膝の上にある痛々しい顔を発見すれば、すぐに状況は飲み込めた。
「大変!すぐに手当てしてあげないと!」
そう言って、自身の脇腹から包帯を取り出した彼女は、口先で切ったそれを亘の体に巻きつける。
「安心してね、少年くん!わたしの体はおくすりでできているの!すぐに治っちゃうわよ!」
次から次へと包帯を生み出しては、ぐるぐる巻いていく彼女。
今までに見たことのない、長い包帯。
今までに見たことのない、太い包帯。
交通事故によって負った傷は、亘の体の広範囲に渡ってついており、彼の痛みを全て解放するには、よりたくさんの包帯が必要だった。
亘の全身あちらこちらを飛んでまわって、治療に専念するキュアヒル。
そんな彼女をしばし滲んだ視界に捉えることしかできなかった航だったが、とある変化に気付いて我に返る。
「ちょ、ちょっと待ってキュアヒル!もうやめて!」
突として発せられた、怒声にも似た声。
航は亘のことでいっぱいいっぱいになっていた自分を、即座に悔いた。
「もうやめてよキュアヒル!このままじゃ君が死んじゃうよ!」
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