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1本目の包帯を取り出した時に比べると、半分にもそのまた半分にも満たないほど小さくなっていたキュアヒル。
彼女が生み出す包帯は、彼女の体そのもの。
そんな肝心なことを、航は忘れていたのだ。
痩せ細り、羽は衰えて。地面の近い場所でしか飛べなくなった彼女を目に、航は胸を痛めた。
「もうやめて、キュアヒルっ……」
「まだだめよっ。せめてあと1本は巻かないとっ」
「もう、じゅうっ……」
もう、じゅうぶんだよ。
涙が邪魔をして、上手く言えなかった航の前、彼女は初めて出会った頃のように微笑んだ。
「わたし、あなたのこと好きよ」
唐突な告白に、航の涙は束の間止まった。けれど脇腹に手をかけたキュアヒルを見て、再び滴るその雫。
「あなたと会えなかったこの3ヶ月間、わたしとても寂しかったの。人の痛みを治すのが任務なのに、あなたが怪我しないかしらって、心のどこかで願ってた」
だからこれは──
言葉を紡ごうとした彼女が包帯を生み出したその時、彼女の体は泡沫のように消えてしまった。
残るのは、ひとひらの白い生地と声だけ。
“だからこれは、わたしへの罰だと思う。最期の最期にあなたと会わせてくれた神様を、わたしは恨みはしないわ”
まるで命を宿しているかのように、自ずと亘の足に巻きついたその白い生地。
キュアヒルの体全てを使って生まれた魔法の包帯が、亘の瞼を開けさせた。
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