キュアヒル

15/16
前へ
/16ページ
次へ
「あれ?兄ちゃん俺、どうしちゃったの?」  頭を打った衝撃なのか何なのかはわからぬが、亘は己の身に起きた出来事を覚えていなかった。 「なんで、泣いてるの……?」  だから今の彼には、理解ができない。  一体何故、兄が号泣しているかなんて。 「キュ、キュアヒルっ…」  殺してしまった。弟の身代わりに妖精のキュアヒルを。 「ご、ごめん、キュア…」  亘が助かり、もちろん嬉しい航だったが、手放しで喜べないこともまた、彼にとっては事実だった。  茜色の空に、君はもういない。  亘をぎゅっと抱きしめた航。彼は空の色が変わるまで、彼女を思い泣き続けた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加