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翌朝の通学路。「早く兄ちゃん!妖精呼んでよ早く早く!」と急かす亘に「待て」と言い、航は故意に転んで血を流す。
「……なにやってんの、兄ちゃん。今のわざと?」
「まあ黙って見ててよ。ぼくはこれで、痛みを負ったから」
詳しい説明は後まわし。
航はとにかく一刻も早く、亘にあの妖精の姿を見せたかったのだ。
「キュアヒルー!」
今日は快晴。雲ひとつない青空に向かって、大きく叫ぶ。
「足を怪我したぞー!手当てしてくれよキュアヒルー!」
キュアヒルー
キュアヒルー
キュアヒルー
しかし焦れるのは、自分の声が木霊するだけだから。
あれ、おかしいな。キュアヒルって名前を呼べば、来てくれるはずなのに……
二度、三度と再チャレンジしてみるが、結果は変わらず。
段々とジト目になってきた亘の隣で、航は昨日のことはやはり白昼夢だったのかと肩を落とした。
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