囁く愛は、夜景に溶けて。

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囁く愛は、夜景に溶けて。

〜雪乃Side〜 広瀬さんに自分の素直な気持ちを伝えたあの日以来、駅まで一緒に帰ることはしなくなった。 まだ互いにぎこちない様な気もするが、『俺のことは気にしないで、気にされた方が傷が癒えるまでに時間かかっちゃうから。』と、彼は困ったように微笑みながらも私のことを気にかけてくれていた。その優しさに少しばかり胸が締め付けられ苦しいが、自分の気持ちに素直になると決めたのだ、後悔なんてない。 そして、あっという間に2週間後が経ち、今日は十四郎との初デートの日。雪乃は家を出る直前まで、何度も何度も自分の姿を鏡で確認していた。 「やっぱり初デートだし…特に普段は仕事でズボン姿を見られてるからスカートで決まりだけど…かと言って短すぎるのはちょっと気合い入れすぎ感あるし…ここは無難に…。」 雪乃は衣装ケースから洋服を数着取り出し、自分の体にあてがった。そして10分ほど悩んだ末に決めたのは、白を基調とした花柄レースのワンピースだった。 「甘すぎず、露出しすぎず、やっぱり清楚系で決まりだね!」と呟いた後、鼻歌を口ずさみながら上機嫌で身支度を整えていく。 「そろそろ行かなくちゃ…。」 玄関にて靴を履き、最後にもう一度服を整える。両頬を軽く叩いた後、「雪乃〜ふぁいっ!」と自分自身に気合いを入れ、ドアノブを回した。 〜十四郎Side〜 あの日の夜、目の前で嗚咽を漏らしながら泣いている雪乃さんを見て、思わず抱きしめてしまった。 あの時の彼女の温かさを、今でも忘れられない。 「雪乃さんの体…柔らかかったなぁ…って俺、何考えてんだよデート前に…!」 十四郎は顔を左右に大きく振る。 雪乃との待ち合わせ時間まで残り2時間を切っていた。時は刻々と過ぎてゆく。考え事がひとつ、またひとつと増えてしまう。その度に平常心を保とうとするも、心臓の音が煩く鳴り響くばかりで、体は正直なものだと納得せざるを得なかった。 「余計なことは考えるな…一番大事なのは、雪乃さんと一緒にデートを楽しむことだっ!」 十四郎は自分にそう言い聞かせながら、ひとりガッツポーズを作った。 〔今日は、よろしくお願いします。また後で会いましょう!気をつけて来てくださいね。〕 と、雪乃にメッセージを送った後、十四郎は目的地へと向かった。
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