2人の微熱。

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「じゅ…十四郎くんっ…!?なんでここにっ?あっ…あの、今の話…聞いてた…の?」 「はい、聞いてました。…昨日の夜、電話越しの雪乃さんに何となく違和感を覚えて…。今日の朝、雪乃さんに連絡送ったんスけど既読ぜんぜん付かないし…ちょっと不安になったんで、我慢できずお店まで迎えに来たんです…。そしたら…2人に出くわしてしまって…その、すみません。」 「えっ…連絡?そんなの来てたっけ…?」 雪乃は焦った様子でカバンの中からスマートフォンを取り出した。通知を確認すると、十四郎からの連絡が入っていた事に今更気がつく。 〔今日の夜、会えませんか?再来週どこに行くのか、直接会って、一緒に話し合いたいです。〕 と、書かれてあった。 「本当だ…!わたし、全然気が付かなくて…ごめんねっ…。十四郎くん…あの、嘘ついて…ごめんなさい…謝るのは私の方なのに。昨日の夜からずっと、嘘をついてしまったことが頭から離れなくて…朝からずっと、仕事もろくに集中できなくて…挙げ句、十四郎くんからの連絡が入ってることにも気づけなくて。わたし、私ね…あっ…あのっ……。」 また目頭がじんわりと熱くなり、涙腺が緩んでしまった。言葉もよりも先に、想いが込み上げてしまう。 「嘘ついてしまったけど…やっぱり十四郎くんには、誠実でありたいと思ったの。だから、広瀬さんには…私の正直な気持ちを伝えた…でも、結果的には広瀬さんを傷つける…ことに…なっ…うっ…て…。」 雪乃は嗚咽混じりに話す。 そんな雪乃の姿を目にした十四郎は、はぁーっと深く短いため息をついた。そして気がつけば、半ば勢い任せに雪乃を抱きしめていた。 十四郎との距離がゼロになり、ほのかに香った彼の匂いは、広瀬のそれとはまた違うものだった。甘く、そして清潔感のある、花のような香りが鼻腔を刺激する。 「俺のこと…ちゃんと考えてくれて嬉しぃ…。誠実で、思いやりがあって…曲がったことが嫌いな、そんな雪乃さんだから…俺は好きになったんです。」 抱きしめていた彼のその腕の力が、更に力強くなるのを感じた。 「好きです…雪乃さん。昔も今も変わらない貴方のことが…好きです。」 ──夜風が、抱きしめ合う2人の熱を冷ます。
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