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プロローグ
高校の入学初日。
今までにないくらい心が躍ったのを思い出す。苦い思い出に支配された中学生活から解放され、今、新たな世界で生まれ変わる。新天地で上手くやっていけるか不安や緊張もあったが、それ以上に期待感の方が大きかった。
俺はここでやり直すんだ。
入学式の朝、校門を潜ると、門の横で咲いている桜の木から花びらが舞った。まるで花びら一つ一つが意思を持ち、新入生を歓迎するかのように踊っていた。
綺麗だ。
期待に胸を膨らませ、俺は校舎へと歩を進めた。
しかし、大きな誤算があった。
あれから一年。
俺は今、頭を垂れている。この学校には、特殊なルールがある。昨年から部活同士で戦い、その勝敗で順位を付けている。ランキングで下位の部活は、上位の部活の連中が通る度に道を開けて、頭を下げなければならない。怒りだとか屈辱と言う感情は、とっくの昔に忘れた。いや、忘却したと言うよりは慣れてしまった。悔しい。おかしい。恥ずかしい。最初に湧き上がった感情の渦はもう、消え去ってしまった。
顔を上げると、窓の外に桜の木が見えた。桜は満開で一年前のように風で花びらが舞っている。
……。
花吹雪を見ても、何も、感じなかった。
この学校は、他校から見たらとんでもないスクールカーストがあると思うだろう。勿論このおかしな制度に反旗を翻した者達も居たが、皆が返り討ちに遭い、名を全校生徒に曝され、辱めを受けた。それから抗う者は居なくなった。
みんな本当は、何が正しくて、何がおかしいのか分かっている。それでも何もしないのは、今ある安全を失うのが怖いからだ。傷つきたくないからだ。ならば、このまま抑圧に耐えるしかない……。
卒業するまで耐え忍ぶしかないと諦めきっていた時に。
あいつがやって来た。
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