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「そうでございましたか…でも、日を改めた方がよろしいかと」
「なぜか?」
「出るんですよぅ」
「タヌキやキツネなぞ慣れておるわ」
「違いますよ、こっちですこっち」
両手をだらりと下げるが作左衛門は全く意に介さず
「はっはっはっ(笑)幽霊が怖くて刀が振れるか、五兵衛の親切たしかに受け取った。かたじけない」
そうして作左衛門は1人屋敷に入り井戸を探す、どうやらまだ使えそうで汲むと水は綺麗なものだった、その時
ごぉぉーん
と、暮れ六つを知らせる時の鐘がなるとどこからかぬるい風が作左衛門を通り抜ける
昔より日の暮れる逢魔時には悪鬼夜行狐狸妖怪が現れると言います
……いる、今ココに誰かが居る
「いちまぁい…」
作左衛門の後ろから悲しげな女の声がする
「にまぁい…」
幽霊なぞ信じてはいなかった作左衛門の膝から下がガクガク震える
「さぁんまぁい…」
これが噂の皿数えの幽霊か?
「しまぁい…」
どうする、どうする、どうする!
「ごまぁい…」
作左衛門はとっさに後ろの女に思いつきで言い放った!
「今ぁ何時じゃ?」
女も律儀に
「へぇ、暮六つで。ひちまぁい、はちまぁい、くまぁい…」
ああー!と作左衛門はしてやられたと思ったその刹那、予期せぬ言葉が聞こえた
「じゅうまぁ…………10枚!?」
女の幽霊、お桂さんは指を折って数えてみる
「1枚、2枚、3枚、4枚、5枚、今なん時で?へぇ六つ時で、7枚、8枚、9枚、10枚…」
お桂さんはあれ?と小首を傾げてもう一度数え直す、どうしても10枚目があるのだ
「おい、女」
「へっ!?へぇ」
作左衛門は井戸を指差し
「10枚目は底にあるのでは無いか?」
「そういえばそうでございました、ありがとうございます」
と、お桂さんはすうっと井戸に消えて行きました
『時皿』と言うお話で
【幕】
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