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 慌ただしく従姉妹たちが帰ると、お母さまとお義父さまになぜかお説教されてしまいました。悪いのは従姉妹なのに。  やっと自分の部屋に戻れたと思ったら、今度はいい笑顔のジェロームさまに捕まる始末。そのまま二回目のお説教タイムに突入です。 「どうしてあの時、助けを求めてくれなかったんだ?」 「あの時というのは……?」 「もちろん、魔術信号を描いていたときだ。どうしてひとりで抱え込もうとしたんだ」 「だって従姉妹が何をしでかすかわからなくて……。お母さまに、自分が結婚したせいで娘がこんな目に遭ったとか思って欲しくなかったんです」  女手ひとつで私を育ててくれた母に幸せになってほしい。そう思うのはおかしなことではないはず。 「義母上の弱点になりたくなかったと?」 「お義父さまやお義兄さまの足手まといにもなりたくなかったんです」 「僕たちが彼らに遅れをとるとでも?」 「す、すみません」  ひえ。怒らせちゃいましたか? プライドが傷ついたってことですかね。やはり高位貴族の誇り、怖いです。 「大事な家族なんだ、もっと頼ってくれ」 「お義兄さま!」 「それはなしで」  ちぇっ。この意地悪さんめ。
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