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「ところで、どうして従姉妹殿の絵姿をボロボロに? 恨みがあるのであれば、代わりに……」
「いやいや、そういう話じゃないんで」
俗に結婚は人生の墓場なんて言いますが、託卵だとか性病の可能性が格段に高い結婚とか、博打にもほどがあるでしょ。ああやだ、ばっちいばっちい。
「なんだ、妬いてくれたわけじゃなかったのか」
しょんぼりと肩を落としたジェロームさまの姿に、首をひねりました。
「大好きなひとが幸せになるというのに、どうして妬む必要があるのでしょう。ジェロームさまが選んだ相手なら、心から祝福しますよ」
「それは誰であっても?」
「さすがに従姉妹みたいな性悪相手はちょっと……」
「なるほど。言質はとったよ」
「は?」
「いいや。こっちの話だから」
にこりと微笑むと、ジェロームさまに両手を優しく握られました。はっ、もしやこれが兄妹の距離なんでしょうか。はーん、役得です! って、ちょっと顔が近くないですかね? 使い魔生活の間、お風呂とか入ってないんですよ! 水浴びくらいはしていますが、汗もかいているし、く、臭いかも! 乙女心的に離れたいいいいい。
「少なくとも僕は、クリスを無一文で追い出すような家の人間に心惹かれることはないね」
「ジェロームさま? なんだか距離感がおかしいような……?」
「おかしいのは君の方だろう。ずっと名前で呼んでほしいと言っていたじゃないか」
さらりと返され、言葉に詰まってしまいました。確かに一理ありますが、なんだか騙されているような。
「それは家族になったのに『クリスタル嬢』呼びはどうなのかなあっていう意味でして」
「まったく君は酷い。僕がどれだけ我慢していたのか、何も知らないんだから。君の無邪気さが大好きだけれど、あんまり無防備で今すぐ押し倒していろいろとわからせたくなるよ」
おしたおす……? ははは、そんなまさか。空耳でしょうか?
「ジェロームさまが、性欲煩悩大爆発の飢えた狼みたいなこと言うわけないでしょう!」
「クリス、君が僕に何を夢見ているのかわからないけれど、僕はただの男だよ。好きな女の子に振り向いてもらうために必死なね」
脳内がぐるんぐるんとなって、口から内臓が飛び出そうです。
「いつか求婚しようと思っていた相手が、いきなり自分の妹になると知った時の僕の気持ちがわかるかい?」
今度は、頭なでなでされたああああ。唐突な告白に限界を超えた私は、そのままぶっ倒れて再びベッドの住人となったのでした。
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