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従姉妹の婚約者さまは、片手に鳥籠、反対側の手で簀巻きにされた従姉妹を抱えて深々と頭を下げていました。うーん、カオスです。従姉妹の婚約者さまって、意外と仕事のできる人物なのでは?
「今回は君の誠意に免じて、彼女の家のお取り潰しだけで済ませるけれど。その気になれば連座で責任を求めることもできるんだよ。本当に彼女を引き取るのかい?」
「それでも大切なひとですから」
おおお、愛が深い……。従姉妹は彼の何が不満だったんでしょうかね。
「さあ、早いところ終わらせよう」
おや、ここで私を抱っこですか? 呪いの解き方は授業で習いましたが、相手に送り返すのが一般的だったはずです。失敗すると痛いって説明された気がします。
「大丈夫だから、心配しないで。リラックスして」
頭と首の周りを優しく撫でられ、思わずうっとりと目を閉じてしまいます。ああ、そこそこ、たまらん、気持ちいいですう。
「まったく、心臓に悪い喜び方だ」
「だって、気持ちいいんだから仕方ないじゃないですか。やあん、もっとお」
おや?
はたと目を開けると、あられもない格好でジェロームさまにしがみついている私がいました。あのかわいらしい羽もなくなり、ごく普通の人間の姿です。
ちょ、ジェロームさま! 戻すなら戻すって言って! 酷い、もうお嫁に行けない!
「何がお嫁に行けないだ。これ以上術を解くのが遅くなっていたら、一生ハクセキレイとして生きるところだったんだぞ」
あれ、別にそれでも良かったのでは? お義兄さまの使い魔生活は、最高の待遇でしたし。
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