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2 県立高校、わたしの仕事
昨日の荒天とは打って変わって、台風一過の快晴だった。
落ち葉の沈む水たまりに映るのは、真っ青な空。夏だなあ、と思う。もくもくの入道雲が、盛夏の訪れを告げていた。
さわやかな夏の日差しに、わたしは思わず目を細める。
そういえば桐、会社のブログに書くネタを台風一過のなんとか――にしてたなあ。
今朝、慌ててスマホに文章を打ち込む桐の背中を思い出した。
「おはよーございます」
三人組の生徒が元気よく挨拶をした。「あ、おはよう」と応え、重い腰を上げて水たまりから立ち去る。
しゃーない、ぼちぼち働きますか。
生徒の名前は知らない。見覚えもない。向こうにとっても、空気みたいな教師なんだろうなと思う。
地学教師のわたしにとって、学校の生徒というのは異星人みたいなものだった。わたしとは生きる星がちがう。ピュアで、何も歪んでいない。
わたしみたいに、肌のハリの心配をしたり、増えたほくろを憂いたり。パフスリーブでガンダム化する心配なんてせんでいい。
彼女たち、彼らは、素のままで美しい。それが酷くうらやましかった。
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