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そんな彼を『相変わらず器用だなあ』と胸の内で思いながら腰にへばり付いた。
「そうだ、晩ごはんは桐の好きな豚のしょうが焼きだよ」
「えっ、まじ? ラッキー」
途端に機嫌が良くなる。
「今から焼くから、おにぎり食べて待ってて」
桐は「ありがとう」と即答し、早速お皿のおにぎりを手にとった。
わたしはそそくさとコンロに立つ。
「あっ、今日もネギ入りたまごだ」
「そうだよ~」
ダイニングテーブルの卵焼きに気づいた桐は嬉しそうだ。万能ねぎが混ぜられたほんのり甘い卵焼きが、彼の大好物だった。
もともと料理が得意だったわけではないが、彼と住むにあたり、わたしの料理の腕は上達していった。理由は簡単。
彼のことが好きだったから。
本日のメイン。冷蔵庫から今日一日漬け込んでいたしょうが焼き用の豚バラを取り出す。
生姜多め、甘さも多めがわたしたちの定番献立だ。ジンジンするくらいに刺激的なしょうが焼きは、ご飯がよくすすむ。
ジュウジュウ音を立てて焼いていると、おにぎりを食べる桐が後ろからひょいとフライパンを覗き込んだ。
「うまそ~う」
「まだ生焼け。待ってて」
「待てん」
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