1 添い寝するだけの不思議な関係

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 大型犬のようにじゃれつく桐をあしらって、皿に熱々のしょうが焼きを盛り付ければ、今日の晩ごはんは完成だ。 ダイニングテーブルをふたりで囲む。 「いただきます」  そういう律儀さも、好きだ。  「いただきます」と「ごちそうさま」をしっかり言うことができる人を大切にしなさい……と、お婆ちゃんが言っていた。  だからそう、これも桐を大切にしなくてはならない理由のひとつだった。 シーリングライトの下で、生活リズムの差はあれど同じ食卓を囲む。  テレビをつけないで黙々と。  たまに顔を上げれば、美味しそうに食事をほおばる桐がいる。それだけで幸福だった。  背筋を伸ばして箸を動かす桐は、俳優さんのように美しい。  何度見ても、見飽きることがない。  わたしの作るごはんが一番好き。って言ってくれる桐が、好きだった。  でも、その好意を真正面に受ける勇気が出ない。毎回、「ありがと」と顔を逸らしてしまう。  照れ隠し、って大学時代の友人は言うけど。それはちょっと違う。  わたしには、彼に言えない秘密がある。  だから、素直になれない。  彼の前で泣くことができない。  友人の前では泣けるのに。
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