1 添い寝するだけの不思議な関係

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 わたしは箸を置き、自分の爪先をまじまじと見つめた。  わたしが食器を片付けている間に桐が風呂を準備する。  先にわたしが入浴し、桐が最後に浸かるのも共同生活を始めてからずっと続いているルーティンだった。  恋人のように一緒にお風呂に入る、ということは無い。 「髪乾かすよ」 「いいって別に」 「だめ。乾かさないと頭爆発するんだから。こっち来て」  風呂上がりに手招くと、桐は渋々といったようすでこっちに来る。 「ゴーするよ」  わたしは、ラグの上にぼーっと座る桐の髪を、一心不乱に乾かす。 「暑い……」 「あともうちょっと。前髪。目閉じて」 「んー」  柔らかい髪は寝癖がとても付きやすい。  さらさらと指の間で乾いてゆく色素の薄い茶髪に、言葉で言い表せない愛おしさを覚えた。  わたしはこの時間がとても好きだ。 湿気ですぐへたりやすい代わりに、乾けばふわっふわのサラッサラになる髪の毛を指先で何度もくり返し梳く。 「オッケー。乾いたよ」  ぽん、と肩を叩けば「美容師みたいじゃん。すげえ」と褒め倒してくれる。わたしは口元を思わず緩めた。 「浦が同居人で本当によかった」
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