プロローグ  

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 初詣の帰りに郵便受けを開けると、珍しい人から年賀状が来ていた。 「どうかしたの?」  肩越しにカノジョが俺の手元をのぞき込む。  袴姿の男性と、華やかな赤の色打掛姿。  番傘を構え、にっこり笑みを浮かべる二人は、大学時代の知り合いだった。サークルの同期。卒業して一回だけ会ったけど、もう久しく顔を合わせていない仲間だった。  なになに、と雪で湿気ったそれを読んでみれば、どうも結婚報告の年賀状らしい。 「こいつら結婚したみたいやけど……くっ」 「なに笑ってんの」 「いや、だって」  写真の下の文――二人で過ごす初めてのお正月を迎えました――を震える指でさす。 「大学時代からずーっと同棲しとってんで」 「ラブラブやん」  カノジョはすごいなあ、とつぶやく。ねえ見せて、と言われたので年賀状を渡した。 「ラブラブ、ねえ……? あれ、亜里沙、一回会ったことあるんじゃない?」 「えー、そやっけ?」 「うん。まだ俺と付き合う前」 「やめてよ、もー。恥ずかしい」  昔の二人を思い出してみる。  やはり、ラブラブとは少し違う感じだった。
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