2 県立高校、わたしの仕事

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 あいつらは声が大きいので、陰口すらモロ聞こえだ。 「声ちっせー」  はい、その通りです。  生徒の方々にはご迷惑おかけしております。  わたしは声が小さい。教師として致命的なこの欠点は、高校教師という、小・中と比較してちょいユルの選択をしたことで、なんとか解決できた――はずだ。実際、授業のときは極力マイクを使っている。別に、禁止されていない。  でもまあ、声が小さいとナメられるのは義務教育に限ったことではないみたいだった。  たぶん、一般的な事務員になれてたとしても、浦さん声ちいさーとヒソヒソ言われてただろう。  けど、わたしの声を桐は好きだという。  つくづく、変な人だ。 午後2時を過ぎたころにようやく業者が来て、紙詰まりが解消した。明日のプリントを刷り終えるころには3時過ぎになっていた。 「北先生、無事にご出産されたらしいですよ」 「あ、はあ……。めでたいですね」 「そうやね」  隣の席の英語講師は、同い年の筈なのに、やたらとチャラチャラしてる。言葉の端々からウェイがにじみ出ている。 「産休ってどんくらいあるんすか」 「え……?」
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