2 県立高校、わたしの仕事

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「北先生。俺って北先生の代打で採用されたんっすよ。だからいつまでだったかなーって思って。あんま書類読んでなかったから、今の今まで忘れてたんすよ。で、産休っていつまでなんすか、普通」 「……わたしに聞かれても、よくわかんないかな」 「女性ってそういうん気にしてるんじゃないですか? 俺みたいなんは無頓着っすけど」 「人によるんじゃないかな……。わたしはあまり、気にしてないかな」  予定なんてないからね。  名札をちらっと確認する。浅田。浅田。よし、今覚えた。 「浅田先生。わたしに聞くより、ほかの方にお尋ねされた方がすぐにわかりますよ」 「そうけ?」  ガチャ、と回転いすの背にもたれ掛かり浅田は不満そうな顔をした。 「なんで先生は気にせえへんの? あれ、なんか前に付き合ってる彼氏おるとかゆってませんでしたっけ」  言ってない。さては口の軽い伊藤か原あたりがこいつに漏らしたな。わたしはぎり、と歯を食いしばった。 「怖い顔せんで。怒らんといてや」 「……怒ってないです。気持ちを鎮めているだけです」 「怒っとるやん……――」  年甲斐もなく、地雷を踏まれただけで感情を露わにしてしまった。
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