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「確かに、いま一緒に住んどる方はいます。けど、結婚はしてません。やから、そういう――。妊娠出産の予定はありません」
改まって浅田に説明をする。必要に迫られたときにいう、テンプレ言い訳口上だ。
「質問あるんやけど。怒らんといてな」
「はいどうぞ」
「イマジナリー彼氏ちゃいますよね」
「はあ?」
二次元とか、幻覚とか?
わたしが余程変な顔をしていたのか、浅田は首を横に慌てて振った。
「や、あの。女性の方と……みたいな。最近俺、LGBTQの講座受けたばっかで、あの、付け焼刃の知識ですけど……」
「違いますよ」
もう、とわたしは手を振った。
「男性の方です。それでもって実在してます」
「あ、ちゃんとしてたんですね」
「ええ、まあ」
と、受け答えしながら、わたしは浅田のあさはかさに眩暈がした。
ちゃんとってなにさ。
ちゃんと、って。
正規雇用で、結婚して家庭を持って、産休育休で子育てをして――。それとも、わたしは同性愛者です無性愛者ですetc…と改まって主張するべき?
わたしは、桐とのあいまいな関係を遠回しに否定されたような気持ちになった。
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