2 県立高校、わたしの仕事

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 そろそろ帰るか、と腰を上げたとき。浅田が捨てられた子犬のような目で見上てきた。 「あの、ひとつ頼みがあるんすけど」 「なんでしょうか」 「英語の採点手伝ってくれませんか」 「……英語は一番苦手です」  渋るわたしを、 「模範解答を写すだけだから」  と浅田は押し切る。  わたしもそこまで意地悪ではないので、ええ……と言いつつも手伝うことにした。机の端に乗っていた紙の山は、小テストの束だったようだ。浅田はそれを前にうなだれている。 「今日はカノジョとデートなんです。あいつは俺と違って福井の常勤教諭で……あぁ」 「わたしと無駄話してる場合じゃなかったやないですか」 「ほんまですよ。何時からデートなんですか」 「6時」  アホか。間に合うわけがない。 「遅刻しそうって、連絡いれとくのが良しですよ」  忠告しながら、わたしは10枚くらい小テストを手に取った。 「ありがとうございます……っ。あ、答えはこれっす。そのまま写してやっちゃってください」 「はいはい」  わたしは赤ペンを手に、慣れない手つきで英語の採点を始めた。  英文が書いてあり、そこを五択で埋める問題と、正序問題だった。
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