2 県立高校、わたしの仕事

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 ウェザー、天気。この町ほど天気予報が役に立たないところはない。 今日は台風一過の快晴となるでしょう。  ――雨は降ります。  今日は一日中雨でしょう。  ――ゲリラ豪雨に注意です。  今日は一日中すっきりしない曇り空でしょう。  ――雨も降ります。  今日の天気は晴れでしょう!  ――遠足には傘をお忘れなきよう。  こんなふうに、言葉尻に全部注意書きがつく。 大通りから一本曲り、くねった坂を登れば駐車場まであと少しだ。雨脚が強くなってきた。  こんな雨の中、前方に傘もささずに歩く背の高い男の姿が見えた。  大丈夫だろうか。  同じマンションの住人なら、徒歩だとあと二十分近く歩くことになってしまう。  わたしはスピードを落として車を寄せた。 「大丈夫ですか――、って。桐!」 「うっす」  スーパーの袋を両手に持った彼が笑った。 「傘はどうしたの」 「忘れてきた」 「あほ。早く乗りまっし」 「よかったよかった。浦がここを通らなかったらパンツまで濡れるとこだった」  シャツの裾を絞りながら、助手席に乗り込む。  全身びしょ濡れだ。  気象予報士、傘持てといって、傘持たず。
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