プロローグ  

3/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
 あの二人の間にある独特の空気。じゃれあう恋人でもなく、熟年夫婦という感じでもなく。もう一度年賀状に目を落とし、あれ何やったんだろなあ、とひとりごちた。  そうだ、姉弟。姉弟のような雰囲気だった。 「まあなんか切っ掛けがあったんやろ」  なんかが、なんなのか全然わからへんけど。  寒いし早よ部屋に入ろ。キンと冷える共用部を去ろうとしたとき、 「……あっ!」  カノジョは年賀状の一人を指さして、目を丸くした。 「この人知っとる。あれや、Kテレビの――」 「そうそうお天気お兄さんやよ」 「超有名人じゃん」 「やろ?」 「わたしそんな人と会ったことあったんやなぁ」  サークル――気象研究会の中でも一番のハンサム君や。そいつと俺は親友なんよ。妙に誇らしくなって、カノジョに「視聴率上げたってな」と笑いかけた。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!