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1 添い寝するだけの不思議な関係
強い風がマンションの窓枠をガタガタと鳴らす。時折換気口から逆流する音が聞こえた。
台風が、金沢に近づいていた。北陸地方に台風が接近するのはとても珍しい。
わたしは居ても立っても居られなくなり、マンションの部屋をうろうろしたりもしたけれど、最終的にソファに寝っ転がってつけっぱなしのテレビをぼーっと眺めていた。
台風の低気圧のせいで、わたしの野性がおかしくなっている。
ひとしきりハイテンションになった後に訪れるのは、鈍色の海面のようなゆーうつだ。憂鬱と漢字で考えるのよりも、もっと気だるい。
学校の先生だって、こんな感じになる日もあるのよ。と、生徒に言ってやりたい気分だった。
わたしは市内の高校で、地学の非常勤講師をしている。全国的に見ても地学のコマがある学校は少なく、なかなかニッチな職種ともいえる。
それなりのやりがいと責任。わたしにはピッタリなんじゃないかと、今は考えていた。
「だっる――」
また強く風がふいた。ごう、という音と共に、何かが窓の外をよぎっていく。青い。工事現場のビニールシートだろうか。
「大丈夫かな――」
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