7人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
台風が近づくと、休みになるのがわたしの職業。(常勤だとこうはいかない)
忙しくなるのが、同居人の職業。
ひとりで安全地帯にいるのが申し訳なく、せめてもの償いとしてカーテンを閉めないままでいる。
気持ちの問題だ。できることなら窓を開けて、彼と同じ荒天の元へ行きたいけれど。そんなことをしたら彼を心配させてしまう。
そうこうしているうちに、ドラマの再放送が終わり、ニュースに変わった。
一時間以上流れていたはずなのに、ドラマの内容は一ミリもわたしの記憶に残っていない。
『こんばんは。この時間は予定を変更して、北陸三県に接近中の台風についてお伝えします』
駆け足な日常に引きずり戻されたみたいだ。やんなっちゃう。夕方のニュースが始まり、堅苦しいアナウンサーが原稿をめくった。
平日夕方のニュースを見るなんて、何年ぶりかな。大学生のころはこんなニュースなんか見なかったし。
就職してからは、ほら、ねぇ。午後四時には家に帰れへんよ。
今日はこの台風様のおかげで、わたしは棚からぼた餅の休みをゲットできた。
ラッキー、なんて。不謹慎すぎて絶対職場で言えないけど……。
最初のコメントを投稿しよう!