1 添い寝するだけの不思議な関係

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 往来を急ぐ市民を背景に、真剣な眼差しがカメラを向いていた。強い照明で、浮き上がる顔立ち。  すっと通る鼻梁、小さな唇、ゆっくりまばたく大きな瞳が視聴者を見つめていた。その凛とした光に、わたしは思わず息をのんだ。 「……あ」  弾みでテレビを消してしまった。真っ暗な画面に、わたしの顔が映っている。  わたしは、桐のように美しいとは言い難い、平均的な顔立ちをしていた。骨ばった輪郭、無駄にある身長。つやつやの髪の毛だけが、唯一の救いだ。ダークブラウンに染めたボブスタイルを維持するのも大変なのである。  もう一度画面をつけると、もう桐はいなかった。堅苦しいおじさんのいるスタジオに逆戻りしている。 ぎゅっと胸が苦しくなった。 働く桐を見るのは嫌いじゃない。だけど、自分が嫌いになる。  力任せにルームウェアを握りしめた。サテンの生地が手汗でじっとり色濃くなる。 不釣り合い、の五文字が、わたしの人生の学級目標に掲げられている。  あかん。久々に劣等感で死にそうだ。  好きなんだよ。好きなんだけど、好きになってええのか分かんないのさ。
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