1 添い寝するだけの不思議な関係

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 大学2年生の夏から、アルブル北金沢の201号室にわたしたち二人は、節約のために共同で住んでいる。  2年の梅雨に、湿気とカビのすごいアパートの1階で、わたしが肺炎になりかけたのを、気象研究会の仲間だった桐が発見してくれたのだ。  ちなみに。当時の桐はそりゃもうモテまくってて、どっちかというとチャラめ。軽い男。  わたしのような「静」を求める人間とは相容れないタイプだった。  家事の分担、添い寝。  求められたのはそれだけ。  マンションは知人の空き物件らしく、賃料の折半はしなくていい……とまで言われたら、わたしは桐の誘いにうなずくしかなかった。  それから数年。社会人になったわたしたち。  案外マトモになった(失礼)桐と、わたしは、ずっとこのまま、曖昧な関係で居られると思っていたのに――。 「立ち退きなんてなあ……。さっさと桐がカノジョつくってわたし追い出してくれたらええのに」  恨みつらみがぼろぼろ口からこぼれた。  テレビにうつる桐は、わたしから見てもとびきりハンサムだ。  彼に好感を抱く人は多いに違いない。
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