「運命のふたり」に毎回当て馬にされる俺

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「運命のふたり」に毎回当て馬にされる俺

「それで、加藤さんと一度お食事に来てみたかったんです」 「俺も! 佐野さんとは前々から話が合うと思ってて! で、でも、まさかこういった場所とは思わなくて......」  グレートサンシャインビルの60階は夜景の見えるディナー会場である。いわゆる大人が価値観や人生観などをひっくるめてお話しても大丈夫な会場だ。  テーブルに置かれたナプキンの使い方が全くわからない。しかし、そんな素振りを見せるわけにはいかないので、フォークやナイフといったカラトリーは佐野さんの使った後に倣うように使っていく。 (彼女がほしいとは言ったけど......。こんな、急に。いやでも、これは本当にいけるかもしれない)  女性と食事をすること自体には慣れている俺だが、こんなロマンチックデートのような場所には慣れていない。  というのも、俺は女きょうだいに囲まれて育った影響で、女友達と女子向けのお店に行くことが多い。フォトジェニックカフェやファミリー向けのチェーン店やアフタヌーンティー会場、スイーツビュッフェに召喚されやすい男だ。俺も楽しんでいるし、何も問題はない。  何も問題はないのだがーー逆にこういったTHE★デート的な環境に1mmも耐性がなかったりする。  ショートカットの佐野さんは今夜はメガネを外していて、職場での可愛らしい一面ではなく、今日はキリッとしたイメージだ。紺色のドレス風のワンピースも大人な女性風でかっこいい。 「今日はなんだかいつもと雰囲気、違いますね」 「折角なので、張り切っちゃいました」 「お、俺のために?」 「ふふ、どうでしょう」  耳に髪の毛をかける仕草でさえも色っぽい。リップでツヤツヤにされた唇の中に、上品に切られたステーキが運ばれていく。 「ねぇ、もし加藤さんだったらこういう女性はお嫌い、ですか?」
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