エピローグ

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 ★☆☆☆☆  嵐の予感?! 三角関係に要注意  食べていたグラタンの下からそんな文字が浮かんできて、玲は思わず眉を寄せた。最近、妙に恋愛ネタが多いように思う。  そんな玲の様子になにかを察したのか透も玲の弁当箱を覗き込んできて、「ぐふっ」と笑いを吹き出した。 「三角関係? 女心を弄ぶ玲ちゃん、ってか」  笑いながらそんなことを言う透に、玲は眉を寄せる。 「そんな予定はまったくないけどね」 「でも、自覚がないだけかもよ?」 「俺の交友関係、知ってるでしょ。思い当たる人、いる?」 「……いねえ」  ぐふぐふと変な笑いを続ける透を尻目に、玲はまたその文字に目を落とした。  確かにそんな予定はないし、そんな交友関係もない。そもそも、こんなグラタンの下に隠された占いが当たると思ったこともない。それなのに胸騒ぎがするのは、前回の恋愛ネタが当たらずとも遠からずな結果を出したからだろうか。  それに、胸騒ぎがするのには、もうひとつ理由がある。  今日の放課後は、一馬と一緒に聖の店に行くのだ。一馬に初めて、聖を紹介するのである。そんな一馬は、聖をどうも勘違いしている節があった。 (三角関係っていうのはまあ、ともかくとして、嵐は困るな……)  ぼんやりとそんなことを考えながら、玲は残りの弁当を口へと放り込んだ。  そうしてやってきた放課後である。玲と一馬はいつも通り、十字路で待ち合わせをしてから聖の店へと向かっていた。 「聖さん、玲に学校をサボらせた人なんだよね」 「いや、だから、言い方ね」 「事実でしょ」 「……まあ、事実ですが」  そんなふうに会話しながらも、一馬はどこか緊張しているように見えた。それにつられるように、玲までも緊張してきてしまう。そう。たとえるならそれは、親に初めて恋人を紹介するような心持ちだ。  などと思いながら、玲はそんな自身に「なんじゃそりゃ」と言わずにはいられない。玲は胸の内でため息を吐く。どうやら自分は、自覚しているよりもずっと浮かれているらしかった。 「でも、本当に優しくていい人なんだよ。金髪で、ピアスで、見た目はちょっとあれだけど」 「ふうん」  納得したのかしていないのか、曖昧な相槌を打つ一馬に、玲は今度こそため息をつく。隣を歩いていた一馬はなにを思ったのか、そんな玲に一歩体を寄せてきた。近すぎて肩がぶつかる。突然のことにぎょっとして一馬を見れば、一馬はどこかふてくされたように唇を尖らせ、玲を睨んでいた。 「な、なに」 「たぶん玲は、俺の気持ちを全然わかってない」 「……だから、せーちゃんは怖い人でも悪い人でもないよって言ってるじゃん」 「だから、そうじゃないって話だよ」  玲は眉間に皺を寄せる。 「じゃあ、どういう話?」 「……言わない」 「言わなきゃわからない」 「察して」 「無理」 「もうちょっと努力してよ」 「努力したし」 「嘘つき」 「嘘じゃないし」
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