青恋クリームソーダ

はじまりはフライドポテトからで

───あれ、かわいいな。

高2の夏休み。私は学校で開講されている夏期講習に参加している。

学校の夏期講習は塾の夏期講習と比べると10分の１くらいの金額らしい。けれど私が塾ではなく学校の講習の方に来ているのは料金が理由ではなかった。

夏期講習では全クラスの生徒が同じ教室に集められる。前から2番目の席に座っている私は問題を解き終わり次の問題に目を通してから、なんとなく周りに視線を散歩させていた。すると前に座る子の鞄に目が留まったのだ。

指定の黒い革の鞄につけていいのは『華美でない小さめのキーホルダー1つ』と決まっているが、彼女の鞄には大きなクリームソーダのキーホルダーがついていた。クリアな緑色のソーダの上に白くて丸いアイスクリーム、その上にちょこんと乗ったさくらんぼ。

私はクリームソーダを飲んだことがなかった。というか炭酸飲料を飲んだことがない。ちなみに市販のオレンジジュースやりんごジュースもだ。母が砂糖や人工甘味料を加えた飲食物を摂取することを許さなかったからだ。何か疾患があるからではなく、健康と美容によくないから、という理由だ。