はじまりはフライドポテトからで

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『ねえ、ここってどうすんの?あの公式じゃダメなんだけど。」 クリームソーダのキーホルダーの持ち主、前に座っている茶髪ロングをツインテールにした女の子がホワイトボードを指差しながら振り向いて聞いてきてハッとする。束感のあるまつ毛、ぷっくりした涙袋に目頭に入れられたライン、ピンクのチークが印象的だ。 茶髪やメイクには厳しい学校だけれど、夏休み中だからチェックが緩いということを見越しているのかもしれない。特に今ホワイトボードの前でぼうっとしている数学担当の若い男性教諭は校則については何も言わず、生徒からお菓子をもらったり、スマホでゲーム画面を見せ合うことすらあった。 「えっ・・・!?えっとここは、こっちの公式を使って・・・。」 「あーそっか、なるほど。前やった公式なんだ。ありがと!」 突然のことに躊躇いつつテキストの前のページに戻って公式を指差すと、彼女はパッと前を向き直した。フローラルな香水の香りがした。 前を向いたかと思うとすぐに『あのさぁ』と再び振り向いてくる。うまく解けなかったのだろうか。人に教えるのは得意ではないので申し訳ない気持ちになる。 「この後渋谷行かない?可愛いプリ機見つけたの。」 「え?」 この誘いから初めての恋が始まるなんてこの時は微塵も思っていなかった。
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