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「そう来るか」
再び弾丸を増やし、強化し片っ端から砕いていく。視界に入る凍てつく障害物を片付ければいつか矢浪が顔を出す。
しかし、友鳴の目論見は外れた。壊れた先から不揃いな氷の壁が再び床から背を伸ばす。
(氷壁の連続生成。無理矢理にでも近付くつもりか!?)
一瞬の迷いが生じた。接近戦に切り替えて迎え撃つか、このまま距離の優位を保ち続けるか。
規則性もなく切り立つ氷に友鳴は即座に判断を下した。
2枚の円型魔術式を貫く弾丸。分裂した極太のレーザーが軌道上の氷をねじ伏せた。
(どちらにせよ目の前に立たれたら矢浪の思う壺だ。後手に回るくらいなら攻め続けた方がいい)
矢浪が持ち掛けた勝負と正面から向かい合う。そう決めた瞬間に目に映るものの流れが鮮明に映った。
矢浪の集中力が移ったのかもしれないなと友鳴は漠然に思う。感情のわずかな昂りも否定は出来ない。
(来い。どこからでも来い。必ず撃ち落とす)
左右、正面、どこから現れても問題ない。極限の集中が失敗の2文字を頭から消し去っていた。
左の目の端に矢浪が着ていた作業着の色が映る。
右手が勝手に動き引金を引いた。視線が追い付いたのはその後だった。
作業着のど真ん中に穴が開いた。
撃ち抜いたのは袖を通す者はない、投げ捨てられた作業着だった。
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